家庭の収入など周りの環境によって子どもが学校外で得られる体験に格差が生じる「体験格差」が社会問題となる中、ひとり親家庭の子どもを対象にしたウィンターキャンプ2024が1月27、28日の1泊2日で行われ、大阪体育大学野外活動部などの学生14名が指導に携わりました。キャンプでは、大阪府、兵庫県在住の小中学生26名がウォークラリー、野外炊事、キャンプファイヤー、ハイキング、クラフトなどの活動を楽しみました。
子どもの学習意欲や課題解決能力は、学校外での体験を得る機会が多いほど向上すると指摘されています。しかし、自然体験について体験格差は深刻で、経済的に余裕のある家庭の子どもたちは自然体験活動に豊富に参加できる一方、様々な理由で貧困を余儀なくされている家庭の子どもたちにはなかなか自然体験を行う余裕がないのが実情とされています。このため、2020年ごろから自然体験活動の体験格差解消に向けた動きが始まり、本学の德田真彦講師(野外教育、レクリエーション)は体験格差解消に向けた取り組みの有効性や意義について研究を進めています。研究の過程で、同様に体験格差問題に取り組んでいた公益社団法人「日本環境教育フォーラム」の加藤超大事務局長と知り合い、昨年からウィンターキャンプを実施しています。
ウィンターキャンプは日本環境教育フォーラムが主催し、本学と受託事業契約を結びました。キャンプに向けた事前研修では、原田順一氏(みんなのアウトドア)、吉松梓氏(明治大学)に協力頂き、キャンプカウンセラーの心構えや対象者理解を深めました。東京マラソンチャリティ事業として参加費無料とし、今年度は大阪府立少年自然の家(貝塚市)で実施されました。
参加した子どもたちは、2日間のキャンプを満喫しました。
キャンプ1日目、ウォークラリーでは、施設内の山や広場など様々なところを歩きつつ、途中には夕食の食材をゲットするための様々なポイントや課題があり、楽しみつつも夕食のために必死に取り組んでいました。野外炊事では、調理、薪割り、火おこしなど慣れない作業が多くありますが、みんなで協力して「ハンバーグ、ひじき炊き込みご飯、サラダ、ジャーマンポテト」を作り、どの班もおいしく食べていました。1日目最後のプログラムはキャンプファイヤーでしたが、歌ったり踊ったりと楽しい時間を過ごしました。夜に見る火はことさら美しく、思い出深い時間にもなりました。
2日目は朝6時半に起床し、部屋の掃除などを済ませ朝のつどいを行いました。朝食も野外炊事で作りましたが、1日目の経験を活かして手際よく調理、薪割り、火おこしを行っていました。ハイキングでは施設展望台(標高約600m)を目指しました。傾斜の厳しいところもあり、特に低学年児童には大変な行程でしたが、高学年生や中学生がうまくサポートしながら展望台まで登り切りました。頑張って登ったご褒美に、とても良い景色を見ることができました。最後のプログラムのクラフトではスノードームを作り、キャンプの思い出とともに、家で待つ家族へのプレゼントになりました。
子どもたちは最終日に「絶対、来年また来るから」と学生と約束するなど忘れがたい経験になったようです。また、保護者からは「子どもたちに普段できない経験をさせていただき感謝です」「私も久しぶりに自分の時間を持てました」などの感想が寄せられました。
また、学生は事前研修を重ねてキャンプに臨み、2日間、子どもたちと寝食を共にしました。
德田講師は「このキャンプを通して、子どもたちは自然の中でたくさん遊び楽しみ、保護者には少しばかりのレスパイト(休息)になればとの想いを持って開催しました。事後アンケートでは、多くの保護者の方から感謝の連絡ややりたくてもやれない現状について回答をいただき、これから継続、発展的に事業を進めていかなければならないと気持ちを新たにしました。また何より、学生スタッフは事前研修等受けながら、2日間全力で子どもたちと向き合った成果であり、彼らが自分のこれまでの学びや力に、『今日の社会課題に対して解決に向かえる力がある』と『自信』を持って、これからもアプローチしてほしい」と話しています。