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2025.03.21

なぜ、IOCは初の女性会長を誕生させたのか 原田宗彦学長に聞く

 国際オリンピック委員会(IOC)の会長選挙が3月20日、ギリシャで行われ、唯一の女性候補だったカースティ?コベントリーIOC理事(41)=ジンバブエ=がIOC委員による1回目の投票で97票中過半数の49票を獲得し、史上初めて女性としての会長就任を決めました。過去9代の会長は欧米出身で、アフリカからの選出も初めて。一方、日本人として初めて立候補した国際体操連盟会長の渡辺守成氏(66)は4票で落選しました。
 史上初めて女性会長が誕生した背景は。IOC会長として求められるかじ取りは。日本スポーツツーリズム推進機構代表理事を務め、オリンピックのマーケティング研究の第一人者である大阪体育大学?原田宗彦学長(スポーツマネジメント)に聞きました。

大阪体育大学?原田宗彦学長

――なぜ、初の女性会長が誕生したのか
 トランプ米大統領が少数派の権利向上をめざす「多様性?公平性?包括性(DEI)」政策の撤廃を進めているが、女性を会長にしよう、ジェンダーイクオリティ(男女公正)を推進しようという、IOCの腰の据わった姿勢が感じられた。IOCは「人類の平和と繁栄を願う」とうたう、世界的にも稀有な組織だ。その理念を達成するために行動に移したと言える。もちろんトランプ政権を意識した分けではないだろうが、まったく真逆の流れであり、高く評価できる。
――アフリカ初の会長誕生について
 5大陸の中で唯一、まだ五輪が開催されていないアフリカ大陸から選ばれたことに意義がある。コベントリーさんはジンバブエでスポーツ?芸術?レクリエーション大臣を務め、手腕がある方だと思う。
――1回目で過半数を取ったことについて
 とても異例なことだ。トーマス?バッハ現会長の強い意思が表れたと思う。IOC委員の7割ぐらいがバッハ会長と接点があると聞く。バッハ会長が理念の実現に尽力したのではないか。
――アジア初の会長をめざした渡辺守成氏は4票で落選した
 アジアとしては2001年の会長選で韓国の金雲龍氏が出馬したことはある。勝つことは難しかったが、立候補したことに意義がある。渡辺氏は夏季五輪の「5大陸5都市同時開催」を公約として打ち出した。開催負担金をどう分担するか、スポンサーの調整など難しい点もあるが、渡辺氏の公約はいずれIOC内で議論されると思う。
――新会長に望むことは
  スポーツと都市の繁栄の両立だろう。日本国内のスポーツを通じたまちづくりのように、五輪というイベントが去った後もその都市が繁栄していくような仕組み、仕掛けを構築してほしい。また、開催都市の招致合戦が現在は、立候補都市が少なく、2024年パリと2028年ロサンゼルスを同時に決めるなど盛り上がらない状態だが、それをどう改善していくかも重要な課題になる。

 原田宗彦(はらだ?むねひこ) 大阪体育大学学長。専門はスポーツマネジメント。日本スポーツツーリズム推進機構代表理事。2008年大阪五輪招致や2016年東京五輪招致の準備段階などに関わった。

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